開いていく学び~第2話「学びが繋がるって⁉」~
あのう、次郎さんが、知識は蓄えるだけじゃなく実践しないといけないと言ってたのを思い出したんですが、実践することと繋がることって、もしかして関係ありますか?
さすが次郎、深い!実践から得られた自分の中での経験、学び、思考は、他者と、そして地域内や地域間で共有されてこそ価値あるものだもの。あ、晴れてきた。
? でも共有するって、なんか難しそうですね・・・
だね~。僕がSPARCで担当する教育プログラムでは、他者との交流を通じて答えを探す実践的な学びを意識したいなって思う。
太郎さんも教育プログラムに関わるんですね!
具体的にはどんな内容を考えているんですか。
そーだなぁ、、、自然と人間社会の関係性をテーマに、学術分野の越境を前提とした横断型の教育・研究活動を体験してもらい、他の教育プログラムや学外へも越境・交流して、新たな出会いと気づきの機会をつくり出すことに挑戦したい※な。コーヒーもう一杯どう?
※「教育には初等も高等もなく、ただあるものは、教育だけ」(デューイ, 学校と社会, 1899)、「誰もが、学校の外で、いかに生きるべきかを学習する」(イリイチ, 脱学校, 1970)」
あ、結構です。自然や人のつながりはもちろん、学問もそれぞれの分野で閉じないで他の分野とどんどん繋がっていくことが重要になってくるんですね。
ところで、太郎さんは普段どんな研究をされているんですか。
ええと、働き始めてからしばらく、水道水、酸性雨、渓流水、地下水などの汚染のしくみを調べて、どうしたら防ぐことができるかを考えてた。そのうち、森や土をめぐる水や物質の不思議な流れに魅せられて、そしてそこに農業や経済が深く関わることを知って、最近では自然もしくは世界の部分としての人間を意識した環境人類学が中心テーマ。
世界各地の奥山、里山、農村、都市を旅しながら、水源林保全、持続的農業、水文化、共異体※、食育・水育・火育とかを研究してるよ。友人に「じゃあ、旅する研究室だね」と言われてから、研究室をそう呼ばせてもらってる。
※共同体に対して、集団における異質なスタイルや存在の共在を強調する言葉(若林1997, 小倉2008など)
今日のテーマは「つながり」ですが、今までの旅で印象的だったつながりを聞かせてもらえませんか?
そうだねぇ。1つの大きなきっかけだったのは、20年近く前に初めて訪ねたネパール。共同井戸など住民が水不足を補うために日常的に助け合っていること、水不足の常態化が複数水源の生活スタイルを生み、そしてそれぞれの水源の成り立ちとバランスが素晴らしく理解され利用されていることに、ゾクゾクした。この体験は、その後の自分の学究に影響を与え続けているのは間違いない、と思う。
それに、旅をしながらある土地に学び、思考を深めることで、別の土地の価値や暮らしの選択肢を再発見するヒントが生まれることも、あるある。ベトナムやカンボジアの農村でも、山梨や土佐山の山村でも。
そうですか。実際に行って、経験すること、学ぶことが大切なんですね。
いつもとは違う扉を開けて、世界の端に立つと、自然の野生、人の野生が見えてくる。
えっ?